南房総ex-press スペシャル・インタビュー
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館山湾を望む相談室で話を聞かせてくれた「おせっ会」理事長の八代健正さん
「おせっ会」は館山・南房総地域に移住したい人、そして移住してきた人をサポートするNPOです。2006(平成18)年に館山商工会議所青年部の活動の一環として始まり、2009(平成21)年に千葉県からNPO法人として認定されました。
今年、誕生から20年。
この地域への移住をめぐる状況は大きく変わってきました。では実際に、移住してくる人たちはどのように変わってきたのでしょうか。
理事長の八代健正さんにお話をうかがいました。
前編・後編に分けてお届けします。

館山港にある「渚の駅たてやま」。おせっ会の事務所はこの建物内にある
移住はこの20年でどう変わったのか ― 八代さんが見てきた移住の風景
あの夏の相談室
おせっ会の主な活動のひとつが移住相談の受け付けです。
私、あわみなこも、2013年8月に「おせっ会」を訪れて八代さんに相談にのっていただき、翌2014年3月に東京都調布市から南房総市和田町へ移住しました。八代さんには「移住しました」とメールを1本送ったきりで、はや12年。その活躍ぶりは遠くから拝見していましたが、すっかりご無沙汰してしまいました。
移住相談では金銭面や仕事のことなど、かなり具体的にアドバイスをいただきました。八代さんご自身の体験も交えながら率直に話してくださったので、こちらも気兼ねせずに相談することができたのを覚えています。
あのとき、しっかり時間をとって親身になって相談にのってくださったことが、今でも印象に残っています。
そして今回、あらためて八代さんにお話をうかがう機会をいただきました。
移住をめぐる状況は、この十数年でどのように変わってきたのでしょうか。
20年前の移住は「特別」だった
八代さんが、当時の移住希望者について次のように語ってくれました。
―― ここ20年ほどの活動の中で、移住希望者もずいぶん変わってきました。
20年くらい前だと、「移住」は特別なことという印象でした。相談にくる人の中には「ちょっと現実離れしているのではないか」と思ってしまうような計画を語る方も多かったように思います。
とくに多かったのが農業に憧れを持つ人たちです。家庭菜園をやりたいという人も含めれば、8割くらいは農業をやりたいと言っていました。自給自足の生活といった「思想」を語る人の割合も高かったですね。
20年前といえば、団塊の世代(1947~1949年(昭和22~24年)生まれの、約800万人。突出して人口が多い世代)が大量に退職したころ。その下の世代が、いま70歳前後の方々になります。
現実的になった移住者たち
―― 今、移住を希望する人たちは、とても現実的な計画を話します。
インターネットが普及して、情報の量と精度が上がったことも関係していると思いますが、15年ほど前からそうした傾向が続いています。
農業をやりたいという人も多いのですが、夢や思想を語るというより、本気で現実的な目標を持っています。いきなり農家として起業するのではなく、千葉県農業大学校などの学校へ通ってから就業するとか、実地で修行をしてから始めるとか。しっかりした計画を立て、予算も考えたうえでやってくるようになりました。
一方で、20年ほど前の移住希望者は、本当にやりたい放題で(笑)。
「フェアレディZに乗りたい!」とか「ウィンドサーフィンに挑戦だ!」とか。
それに比べると、今の移住者は質素でミニマムなライフスタイルを好む人が多い印象です。住まいも中古をリノベーションしたり、畑で作物を作ったり。あと、口をそろえて「地域の人と仲良く暮らしたい。地元に寄り添って暮らしたい」と話します。地に足がついていて、無駄がないんですよね。
…「あの、初期の『やりたい放題』の方々はその後、どうされたのでしょうか。夢破れて都会に戻ったのでしょうか?」とお聞きしてみました。
「いえ、みなさん目一杯、人生を楽しんで過ごされましたよ」と八代さん。
その言葉に思わずホッとするあわみなこでした。
3・11とコロナ禍が変えたもの
2011年の東日本大震災、2019年の令和元年房総半島台風、2020年から始まったコロナ禍…こうした災害をきっかけに起きた変化はありますか?
―― 3・11の震災から15年ほど経ち、混乱期が過ぎた、今から10年ほど前から、都市機能に不安を感じる方々が移住相談に来られるケースが増えました。田舎のほうが安心して暮らせる、という思いを持つ方が多くなったのでしょうね。
コロナ禍以降は、世代に関係なく「いかに自分の人生を豊かに生きるか」ということを真剣に考えている人たちが増えたと思います。
コロナ禍で団体旅行がなくなり、みんなで遊ぶ、家族で遊ぶ、というこれまでの過ごし方が変化して、個人で遊ぶ、過ごすことが好まれるようになりました。ソロキャンプが流行りましたよね。毎年館山で開かれる若潮マラソンは、コロナ禍の前には、参加者が1万人を超えたこともありましたが、コロナ禍で一気に減り(その後、増加傾向)、今はトレイルランニングが流行っています。トレイルランニングは、個人の能力を追求するという面がありますし、人としてどう生きる、ということと関わっているのではないかとも思います。ミニマムな装備で自分の体力と勘でやり抜く、というのも生き方の変化を象徴しているように思います。
コロナ禍によって、いろいろなことにスイッチが入ったのではないでしょうか。ここ3、4年でリモートワークの方が激増し、それにともなって二拠点生活の方も増えました。仕事を変えずに移住ができるようになって、移住の選択肢が広がったのは間違いありません。
…令和元年房総半島台風では、この地域も大きな被害を受けました。
正直なところ、「移住を考える人は減ってしまうのではないか」と感じていた地元の人も少なくなかったと思います。
けれども、移住相談はその後も途切れることなく続いています。
さまざまな出来事を経ながらも、この地域で新しい暮らしを始めたいと考える人がいることを、移住者のひとりとして嬉しく思うあわみなこでした。

館山湾の穏やかな海。多くの移住者がこの景色に魅了される
【後編】へ続く
この記事を書いたのは…

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千葉県松戸市出身
長らく東京でOLをしていましたが、2014年に東京から南房総市へ移住。今は、パソコン個人指導、事務代行、ホームページの作成、クラウドソーシングなど、できることはなんでもやってサバイバル中。
「自分が自分のボスであること」をモットーに日々過ごしています。
ライターの仕事を通してこの地域はもちろん、世界中の人々とつながって生きていきたいと思っています。趣味はブログ、ヨガ、読書など。
(Webサイト)
◆南房総極楽日記 ~Good-by 東京 Go Go 和田町!~
http://minamiboso-country-life.com/
◆あわみなこパソコンサポート
http://awaminako.com/
◆~今日も断酒天国~アルコール依存症ぴなこ「今日一日」のためのウェブサイト
http://recovery-from-alcoholism.com/
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