
彩さんデザインのTシャツ
館山市北条の住宅街にある「ハレアカラ」は、誰でもふらりと立ち寄れる、あたたかな空気の流れる場所です。
カフェとして、交流の場として、地域の人たちがゆるやかにつながるこの場所では、今、縁ある人たちが少しずつ活動を始めています。
この場所は、ある出来事をきっかけに生まれました。

広々としたスペースで穏やかな時間が流れる
居場所を失った日
「ハレアカラ」を立ち上げたのは、大和田妙さんです。大和田さん一家は2025年4月、東京都台東区から館山市へ移住しました。
長女の彩さんは、県立安房特別支援学校中学部3年生。重度の知的障害があり、身体障害3級で、小股で歩く様子が見られます。日常生活の多くの場面で見守りや介助が必要で、常に大人の目が届く環境が欠かせません。自傷や他害の行動が出ることもあり、慣れない環境では強い不安が生じやすいといいます。
彩さんは今の学校が大好きで、毎日喜んで通うようになりました。一方で、放課後に通っていたデイサービスが突然、閉所することが決まります。
その施設は、昼は高齢者の生活介護、夕方からは障がいのある子どもの放課後等デイサービスを行っていました。週に4日、少人数で運営されており、彩さんにとっても安心して過ごせる場所でした。ざわざわした環境が苦手な彩さんにとって、落ち着いた雰囲気は大きな支えだったといいます。お弁当の手配などもあり、家族にとってもありがたい存在でした。
しかし、その大切な居場所が急になくなることになります。ようやく見つけた安心できる場所を失う知らせは、まさに青天の霹靂でした。妙さんは泣きながら、「なんとか続けてもらえないか」と訴えました。

大和田妙さん この日、イトオテルミー療術許可証を額縁に
「あなたがやってみたら?」から始まった挑戦
「あなたがやってみたら?」
施設の閉所を受け、関係者からかけられたこの一言が、大和田妙さんの背中を押しました。
妙さんは、介護士や保育士の資格を持ち、支援員として働いた経験もありますが、施設の運営は未経験でした。それでも、この地域には放課後等デイサービスが少なく、「彩の居場所がなくなってしまう」という切実な思いがありました。
さらに、今後のことも頭にありました。特別支援学校の高等部を卒業したあとの彩さんの行き場が限られてしまうという現実です。「その先の居場所もつくりたい」という思いは、次第に強くなっていきました。
妙さんの願いは、それだけではありません。障がいのある子どもを育てるお母さんたちが、少しでも元気になれるようにしたい。そのためには、子どもたち自身が安心して楽しく過ごせる場所が必要だと考えました。
これまでにも、テルミー(温熱療法)やダンス、体操など、心身の健康につながるさまざまな取り組みに関わってきた妙さん。そうした経験を活かしながら、障がいのある子どもとその家族に限らず、地域の誰もが健康に過ごせるような情報発信や交流の場をつくりたいという思いもありました。
こうしたいくつもの思いが重なり、「自分でやってみよう」と決意します。こうしてできたのが「ハレアカラ」。「ハレアカラ」はハワイのマウイ島にある山の名前で、太陽の家という意味です。彩さんのお兄さんのアイデアです。

ハレアカラ 入口に飾られた手作りの小物
障がいのある子とその家族にゼッタイ必要なこと…それは
まず妙さんが考えたのは、誰もがふらりと立ち寄れる場所をつくることでした。
週に一度開かれる「晴れカフェ」では、お茶を飲みながら自由に話ができるほか、午後には親子でお菓子づくりを楽しむなどくつろげる時間も用意されています。週末にはイベントやランチ会も開催され、少しずつ人の輪が広がっています。
また、施設はレンタルスペースとしても開放されており、地域の人が気軽に使える場としての役割も担っています。
こうした取り組みの根底にあるのは、「家族が少しでも安心して過ごせる時間をつくりたい」という思いです。
とくに大きな課題として見えてきたのが、ショートステイの必要性でした。
障がいのある子どもにとって、慣れない環境は大きなストレスになります。強い不安からパニックを起こし、暴れてしまうことも少なくありません。そのため、家族以外に預けること自体が難しいケースも多いといいます。結果として、保護者が体調を崩しても病院に行けない、日常的な用事すら思うようにこなせない、といった状況が生まれてしまいます。
だからこそ、安心して預けられる場所が必要です。子どもをここに預けて、保護者が病院や銀行に出かける――そんな当たり前のことが当たり前にできる環境をつくりたいと妙さんは話します。
さらに、子ども自身にとっても、自宅以外の場所に泊まる経験は大切です。いざというときに備え、少しずつ環境に慣れていくことが、将来の選択肢を広げることにもつながります。

手書きのスケジュールが書かれたホワイトボード
ハレアカラの今とこれから
現在、ハレアカラでは、妙さんと仲間たちの中にある「やりたいこと」が少しずつ形になり始めています。
2026年4月には、北条ビーチマーケットに「彩の杜」として出店。彩さんが描いた絵をもとにしたTシャツの販売が行われ、妙さん自身もテルミーの施術を提供しました。彩さんは月に1回、絵を習っており、そのときどきの気持ちのままに自由に描く作品は、どれもいきいきとした魅力にあふれています。
そのほかにも、しめ縄づくりや工作などのものづくりイベント、ダンスエクササイズの開催など、さまざまな取り組みが行われてきました。今後はピアノ教室の開講も予定されています。
施設内にはキッチンやお風呂も備わっており、将来的には宿泊を伴う利用も視野に入れています。ここを、障がいのある子どもたちが働き、工賃を得られる場にしたい。そして、高校卒業後の新たな居場所として機能させていきたい——そんな将来も描いています。
この場所は着実に形を変えながら、広がり続けています。
地域のみなさまへのメッセージ
ハレアカラのすぐ近くには高校があり、多くの生徒たちが行き交います。
「気軽に立ち寄って、お茶を飲んだり、おしゃべりしたり、勉強したり。そんなふうに使ってもらえたらうれしいですね」と妙さんは話します。
「まずは、この場所のことを知ってほしい。そして、来てほしい」
ハレアカラは、特別な人のためだけの施設ではありません。障がいの有無に関わらず、誰もがふらりと立ち寄れる、開かれた場所でありたい——その思いが、活動の根底にあります。
「太陽の家」という意味を持つ「ハレアカラ」。
この場所が安房地域をあたたかく照らし、障がいの有無に関わらず、誰もが元気に健康に過ごせる交流の場になってほしいと、妙さんは願っています。
館山の住宅街に生まれたこの小さな場所が、やがて地域の人々をゆるやかにつなぎ、あたたかく照らす存在になっていくのかもしれません。
(※本記事は、2026年4月に取材・撮影を行った際の情報をもとにしています)
ハレアカラ(@8aleakala)
https://www.instagram.com/8aleakala/
この記事を書いたのは…

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千葉県松戸市出身
長らく東京でOLをしていましたが、2014年に東京から南房総市へ移住。今は、パソコン個人指導、事務代行、ホームページの作成、クラウドソーシングなど、できることはなんでもやってサバイバル中。
「自分が自分のボスであること」をモットーに日々過ごしています。
ライターの仕事を通してこの地域はもちろん、世界中の人々とつながって生きていきたいと思っています。趣味はブログ、ヨガ、読書など。
(Webサイト)
◆南房総極楽日記 ~Good-by 東京 Go Go 和田町!~
http://minamiboso-country-life.com/
◆あわみなこパソコンサポート
http://awaminako.com/
◆~今日も断酒天国~アルコール依存症ぴなこ「今日一日」のためのウェブサイト
http://recovery-from-alcoholism.com/
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