舞台はココ! 活字の世界の南房総【7】海が見える家 はらだみずき著
こんにちは、南房総市和田町在住のあわみなこです。
2014年3月に東京都調布市から移住してきました。
この地を愛する私は、南房総を舞台とする映画、小説、エッセイなどは見逃さないようにしています。
今回は、はらだみずき氏の著作「海が見える家」を紹介します。
男の子の自立ストーリー
東京に暮らす主人公の文哉(ふみや)は大学を卒業後、やっとのことで入った会社がブラック企業と分かり、1か月で退職。
その数日後に、見知らぬ男から「あんたの親父、亡くなったぞ」という電話を受けます。
数年間連絡をとっていなかった父親は、文哉にも知らせずに南房総市で生活しており、病気で急死したのです。
「父はなぜ南房総に行ったのか?」
――― 文哉は、父がこの土地でどのように生活していたのかを知るにつけ、多くの気づきを得て自分の生き方を考えるようになりました。
そして、文哉は父の仕事を継いで南房総で生活しようと決断しました。具体的には近所の別荘の管理の仕事をはじめとする便利屋的な仕事からはじめつつ、できるかぎり自給自足に近い生活を送ろうと、地に足をつけて踏ん張り始めます。 文哉は南房総の自然と、生前の父と関わった人たちの中で癒やされ、失意の中から新しい一歩を踏み出す勇気をもらったのです。
…ということで、ちょうど前回ご紹介した「エミリの小さな包丁」の男の子版、といった趣があります。エミリも文哉も性格が素直なので、すいすい成長します。そんなにうまくいくのか、というツッコミもあるかもしれませんが、エミリの場合も文哉の場合も、人が成長し、心が自立していくには何が必要かということがしっかり描かれている点で読み応えがありました。
「どうなる、どうなる」のストーリー展開
突然の「父死す」の知らせから始まるこの物語は、無駄のない展開で気持ち良く読めました。南房総での文哉の生活は、少しずつ軌道に乗り、関わる人々も増えてにぎやかになっていきます。続編の「海が見える家 それから」では文哉の健闘ぶり、活躍ぶりがクローズアップされて痛快です。さらにもう1冊「海の見える家 逆風」と続き、今のところ全3巻。もしかしてまだまだ続くのかも…? 楽しみにしています。
南房総のセールスポイントもたっぷり
この小説ではまた、南房総の魅力がよく伝えられています。
自然の美しさ、サーフィンや釣りの楽しさ、ビーチコーミングなどの魅力。物語で描き出されるこうした背景が南房総という土地の可能性を浮き上らせます。 文哉が暮らす土地はおそらく富浦辺りではないかと思われますが、南房総の海近くであればどこが舞台でもおかしくありません。
南房総と青春小説
南房総と青春小説…はとても相性が良いように思えます。 青い空と海、緑深い山が「若さ」という宝物をひときわ輝かせてくれるからではないでしょうか。
はらだみずきさんも森沢明夫さんと同じく千葉県生まれ。「サッカーボーイズ」シリーズをはじめ、若い方が主役の小説を多く書いていらっしゃいます。最近、田舎暮らしを始められたようです。千葉県に縁のある方でもあり、これからも応援したいですね。
はらだみずきオフィシャルサイト