非資本主義の可能性をさぐる“大人の読書会”に潜入してみた
みなさんは読書をしていますか? どれくらいの頻度で本を読みますか? 「大人の読書会 まるやま」ではほぼ毎月、選ばれた一冊の本を読んだ参加者が集まり、その本について語り合っています。どんな人たちが集まり、どんな風に語り合っているのか、読書会に潜入したときの様子とともにお伝えします。
読書会の主催者はどんな人?
主催者の前田浩彦さんは、毎年秋に開催している野外ブックマーケット「あわぶっく市」の発起人でもあります。2006年、夫婦で南房総に移住しました。
前田さんは、隣の鴨川市で開かれていた読書会に参加し、「1冊の本を複数で読む楽しさに目覚めた」と言います。「近代で失ったもの」をテーマにしたその読書会が終了することになったとき、「テーマの大枠は継承しつつ、もっと柔らかく間口の広い読書会にしようと始めました」と、大人の読書会まるやまを始めたきっかけについて話します。
2015年にスタートしてから私が話を聞いた時点で57冊の本が読書会で語られてきましたが、その中で印象に残っている本について聞いてみました。その答えは、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(著=ブレイディ・みかこ 出版=新潮社)。
「読書会のテーマが『非資本主義の可能性をさぐる』なので、課題本が大きな話になりがちなんですが、日常の生活から“非資本主義的なもの”を見つけられないかなと常々思っています。ブレイディみかこは硬軟をうまくとりいれ語れる最近では珍しい人だと思います。このあんばいが大事」 と、前田さんは言います。
課題本『人新世の「資本論」』について語る
私が潜入したのは、第57回「大人の読書会 まるやま」で、このときの一冊は『人新世の「資本論」』(著=斎藤 幸平 出版=集英社)でした。集まった場所は、南房総市丸山地区にある「古民家ギャラリーMOMO」。19時半、田園風景が広がる地域に建つ古民家に灯りがともり、続々と参加者たちが集まってきました。
参加者は和室にある大きなテーブルに、それぞれが持参した『人新世の「資本論」』を置いて席についています。この日初参加の方がいたので、まずは簡単な自己紹介から始まりました。南房総市はもちろん、近隣の館山市や鴨川市からも参加者がいました。
前田さんが参加者に感想を促すと、 「目次がすごく分かりやすくていい。ここまで詳細に目次を書くのも珍しいね」 「文章が分かりやすく、読みやすい」 「今更ながら資本主義ってこうなんだ、が分かりやすく表現されている」 と次々に感想の声が。
「人間はもっと豊かになれるんだよ、ということを改めて確認できたのでは?」と前田さんが問いかけると、資本主義の矛盾について参加者が語り始めました。
同じものを読み、違う目線を知る
私は今回の課題本である『人新世の「資本論」』を読んでいませんが、大人の読書会まるやまに参加している人たちの意見を聞くだけでも、その多種多様な考え方や物の見方に刺激を受けました。ここに、印象に残った言葉を紹介します。
「地域で作った米を地域で食べるようにしたい。“地域内自給”ということ。この本でそれができるのかなと後押しされた。お金にこだわりたくない」
「地球がなくなったら、どんなにお金があってもね……。環境資源も無くなってきている。この本にも書いているけど、山けずって、石油掘って、資源は有限と分かってるけど、まだ大丈夫かなって思ってしまう」
「完全に技術は否定しない、1970年代の生活って書いてた。電話はあったかな? コンビニはないね。パソコンは?」
「たくさんの人がこの本を読めばいいと思う。この本が売れてるってことは、著者の意見が支持されてるのかも?」
参加者がどんな人たちか、少しは想像できましたか?
「次回の候補を持ってきました」
読書会の終わりに差しかかったころ、一冊の本を手にした参加者が声をあげました。次回の課題本を、みんなで相談して決めるようです。参加者たちの考え方、自分の意見をきちんと言葉にして伝え、人の意見をきちんと聞くという行動、それらはずうたいだけの“大人”ではないほんものの大人を感じさせるものでした。
次回は参加者に協力いただいたアンケートを元に、参加者からみた大人の読書会まるやまの魅力や印象に残っている本、読書時間の作り方などを紹介します。題して「非資本主義の可能性をさぐる“大人の読書会”参加者に迫る」。どうぞお楽しみに!