非資本主義の可能性をさぐる“大人の読書会”参加者に迫る

南房総市丸山地区でほぼ毎月開催されている、「大人の読書会 まるやま」参加者に協力いただいたアンケートを元に、参加者からみた大人の読書会まるやまの魅力や、印象に残っている本について紹介します。

大人の読書会まるやまについては、「非資本主義の可能性をさぐる“大人の読書会”に潜入してみた」をご覧ください。

「大人の読書会まるやま」の魅力について

読書は、時間があればいつでもどこでも好きな本を読み進め、1人で楽しむことができます。それなのになぜ、わざわざ読書会に参加して、決められた課題本を決められた期日までに読むのでしょうか?

大人の読書会

「大人の読書会まるやま」の様子

「雑多な人が参加し、自分では読み取れてなかったことや思わぬ感想が聞けて楽しいから。ひとりで読むことでは得られない読書のおもしろさを毎回感じてます」

「メンバーがみなさん個性的で、私よりみんな若く、しかも勉強家ぞろい。おそれをなしながらも尊敬の念をもって、拝聴しています」

“メンバーが個性的”という言葉を書いている人が何人かいました。その通りで、翻訳家だったりギャラリーのオーナーだったり、みなさん好きなこと、やりたいことを仕事にしている方が多いように感じました。なので、“サラリーマンの集まり”とは違う個性の持ち主たちという印象です。

「私にとって、課題本が理解できない内容でも、ほかの参加者の意見を聞けるのがよい。また、“非資本主義の可能性をさぐる”という読書会テーマの割には、ゆったりとした雰囲気で落ち着いている」

「自分とはちがう視点からの意見を聞けること。自分の考えを言語化するトレーニングになること」

大人の読書会

同じ本でも、読むときの年齢や環境、タイミングによって受け取る内容が異なることがありますが、読書会ではそれぞれが受け取った内容をシェアすることによってまた新たな気付きや学びが得られるようです。あとは、主催者である前田さんの人柄と、ゆるい感じが心地いいという意見もありました。

印象に残っている本とその理由

課題本のみならず、ふだんから多くの本を読んでいる参加者にとって、印象に残っている本はどんな本なのでしょう?

「非資本主義の可能性をさぐる“大人の読書会”に潜入してみた」の中で前田さんが挙げた『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(著=ブレイディ・みかこ 出版=新潮社)を挙げる人が多数いましたが、ここでは下記2冊を紹介します。

大人の読書会課題書

『チェルノブイリの祈り――未来の物語』
(著=スベトラーナ・アレクシエービッチ 翻訳=松本 妙子 出版=岩波書店)

「読んでいると部屋の空気がドンドン抜けていって真空になっていくような、大気圏外の音のない場所にうかんで読んでいるような、怖い読書体験でした。原子力の事故にあった人やその家族は地球の外に放擲(ほうてき)されてしまうのだと思いました」

「原発事故の恐ろしさをこれほどまでに表現できるものかと、読むことのつらさを感じた。作者はさらに悲痛な思いで聞き取り、直接の被害者はさらにさらに地獄の思いだったと思う。また当時のソビエトの社会状況も伝わった」

「何度も本を閉じてしまいました。おぞましい現実と、人々の深い声に。この本を書き上げるまでの著者の精神的な営みに感銘を受けました」

『いのちへの礼儀――国家・資本・家族の変容と動物たち』
(著=生田 武志 出版=筑摩書房)

「ちゃんと見ていなかった。著者の『いのち』に対する尊厳、人間と動物との関わりなど、 多岐に渡る内容でしたがコロナ禍と重なり、あらためて捉え直す機会となりました」

「わたし自身が、ただ誰かに利用され殺されるために生まれてきた存在だったら…? 家畜の生について、“人間中心主義”について、あらためて深く考えさせられています」

これらの本を私は読んでいませんが、「自分ではなかなか手に取らないような本が課題本になることが多いので、どの本もすべて興味深く読んで、毎回みなさんの意見・感想を楽しませてもらっています」という声もあり、深く納得しました。

忙しい日々の中、読書会参加者たちがどのように読書の時間を作っているのかを紹介しようと思いましたが、長くなってしまったのでそれはまた次回。「“大人の読書会”参加者に聞く、読書時間のつくり方」で紹介します。

なべたゆかり

熊本生まれ、兵庫育ち。 国内・外を放浪したあと、2011年1月南房総に漂着。 築百年余りの古民家を改修しながら、犬、猫、ヤギとの生活を満喫中。 田んぼや畑だけでなく、イベント出店やライター業など、“暮らしから生まれる百の仕事をこなす”立派な百姓を目指して活動中。 ◆安房暮らしの日常ブログ https://awaawalife.com/ ◆インスタグラム https://www.instagram.com/awaawa_life/?hl=ja

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