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白間津の大祭~次の世代に伝えたいことがここにある~【舞台裏編】

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南房総市千倉町白間津(しらまづ)地区のお祭りが、2019年7月19日~21日の3日間行われます。4年に一度しか行われない貴重なお祭りで、大祭を「オオマチ」と呼びます。
このお祭りは、神様の「仲立(なかだち)」に選ばれた2人の少年日天(にってん)・月天(がってん)を中心に進行し、少女達の「ササラ踊り*」「トヒイライ*」、少年達の「エンヤボウ*」、勇壮な海の男達の「酒樽萬燈(さかだるまんどう)*」の踊りがあります。
また、二本の大きな旗(はた)を引く「オオナワタシ*」などの独特な行事で構成されています。

私が今まで見てきたどのお祭りよりも独特な”何か”を感じるお祭りなのです。
あなたも、”その何か”を探しに見に来ませんか?
観光で来られた方でも、オオナワタシの綱の引手としてお祭りに参加できますよ。
事前のお祭り練習時のエピソードもまじえ、お祭りの歴史・舞台裏などをご紹介いたします。

*のついた神事の簡単な説明を【当日のご案内編】の記事に書いています。ご参照ください。

白間津の大祭【当日のご案内】

他のお祭りとどう違うの?

白間津の大祭は、平成4年に国の重要無形民俗文化財*に指定されています。
古くからの慣わしもかなり正確に残っており、この地区独特の祭礼として様々な注目を集めています。
民俗学的にも、中世から近世にかけての日本におけるお祭りの歴史を知る上で貴重な存在ともいわれているそうです。

「4年に一度しか行われないのはなぜだろう?」と不思議に感じて、白間津大祭保存会長の国府田(こうだ)秀樹さんにお話を伺いました。
「(記述には残ってはいませんが)昔からお祭り自体が非常に華美でした。
今は変わってきていますが、昔は、仲立やトヒイライの衣装は、絽(ろ)の着物。
お祭りが三日間続き、その間毎日衣装替えをしたのでお金がかかりました。」といいます。
お祭り自体、お金がかかるものですが、個人が負担する費用も大きいそうです。
盛大かつ壮麗(そうれい)なお祭りだからこそ、4年に一度なのでしょう。

※国の重要無形民俗文化財
衣食住、生業、信仰、年中行事などに関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術など、人々が日常生活の中で生み出し継承してきた無形の民俗文化財のうち、特に重要なものとして国が指定したものである。

引用:Wikipedia

脇役あってなんぼのお祭り!

祭りの主役は、あくまで神への奉納に舞う子ども達、巫女や勇壮な男達。
ついつい派手な踊り手ばかりに目をやってしまいますが、それを支えている古老や青年、女性たちに注目し、練習を見せていただきました。
古老の中でも国府田さんが唄を歌い出すと、ピシッーと空気が変わり、さぁ~練習が始まるぞ!!と身が引き締まります。
国府田さん自身も昭和42年に仲立の経験をし、誰もが”祭りといえば国府田さん”というほど頼もしい方です。

お祭り本番では、女性は表立って現れることはありません。
踊りを教えたり、衣装(シャグマ*や花笠作り)を作ったりするお母さん達も、祭りの土台を支える重要な存在です。

「支える人・支えられる人があってなんぼ」のお祭りだと思いました。
町の誰もが一丸となって、“お祭り”という目標に向かい頑張るからこそ盛り上がり、終わった後は達成感でいっぱいになるのではないでしょうか。
4年に一度、町のみんなが目標の”お祭り”に向かって輝いているところも魅力の一つだと思います。

【保存会長の国府田秀樹さん】

【写真:仲立に選ばれた少年の祖母がシャグマを繕う】

 

※シャグマ(赤熊)…仲立がお祭りで被る、赤く染めた麻の毛で作った被り物。

白間津の祭りにかける人々


今年は2歳の子どもも参加しています。
2歳といえども何度も練習に通っていると、耳と体で覚えるらしく、それなりの形になって踊っているから驚きです。
子どもの死亡率が、今よりはるかに高かった昔のこと。
生きている間、一生に一度でも神に踊りを奉納させたほうがいい…という考えから幼児にも踊らせる慣わしが続いたようです。
また、踊れようと踊れまいと「村」の通過儀礼である「祭り」を体験させておき、村の一員であることを自覚させる意味もあるといわれています。
現在はさらに『次の時代にもつなげて欲しい』思いも込められ、
「この先々お祭りがどうなるか分からないけれど、祭りを続けていこうという意志がある」と国府田さんが熱く語ってくれました。


酒樽萬燈の拍子木(ひょうしぎ)を打つある方は、拍子木を練習用と本番用と分けており、本番用は相撲でよく使われている拍子木をわざわざ本場の専門店まで買いに行ったそうです。


大雨の中、国府田さんと一緒にショゴリ*を終えた後
「こんな大雨の中でも神事はおこなうのですね。」と私が言うと、
「はい。やらないということはないです。」
「いつも本番のお祭りの時は、必ず晴れています。」
「だから、我々は必ず晴れるという思いでやってます。」
と、祭りにかける強い思いが胸に響きました。

※ショゴリ(潮垢離)…祭りの約50日前から仲立と保存会長が毎朝裸足で海岸に行き、浜の砂を一升ますに入れ、日枝神社まで持っていき拝殿に供える神事のこと。


まとめ

ぜひ、このお祭りを見て‟何か…”を感じて持ち帰ってください。
自らの地域のお祭りのあり方や関わり方を見直す機会となるかもしれません。
そして、またこの地を訪れてほしいと思います。
今は、お祭りの過渡期といわれています。昔から綿々と続いてきた貴重なこのお祭り。より多くの人が関わって受け継がれ、いつまでも続くことを筆者である私も願っています。

~白間津の大祭~
日程:2019年7月19日~21日の三日間
駐車場:南房千倉大橋公園・白間津のお花畑の駐車場
※お祭りで道路が交通規制中ですので、駐車場から歩いてお越し下さいとのことです。
※どちらの駐車場からも歩いて12分くらいで、日枝神社につきます。

引用および参考文献

・Wikipedia
・千倉小学校からの配布物『白間津の大祭への児童・生徒の参加協力について』
(2019年1月吉日配布)
・『白間津の大祭』千倉町・朝夷地区教育委員会(平成6年出版)
・公民館講座
『千倉地区 白間津のオオマチを知ろう~四年に一度のオオマチってなんだろう?~』
講師:日本民俗学会会員 田村勇氏,保存会長 国府田秀樹氏(2019年7月10日開催)

白間津の大祭【当日のご案内編】

白間津の大祭【当日のご案内】

 この記事を書いたのは…

shouji naomi
香川県出身。
只今子育ても半ばにさしかかり、40代からやりたいことを仕事にしたいと一念発起。
プロカメラマンに師事しながら、駆け出しカメラマンとして千葉県南房総市を拠点に“カメラで地域おこし”をテーマに仕事している。人との出会いを大切にし、人との輪をつなげるお仕事ができたらいいなぁと思っています。
ライターとしても、“地域おこし”ができるのではないかと猛勉強中。

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