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白間津の祭りの渦に飲み込まれた体験談

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房総半島の南端にあり海沿いに位置する千倉町白間津(しらまづ)地区には、約1000年も昔から続く独特なお祭りがあります。
四年に一度、夏の三日間おこなわれる大祭のことを白間津の方は、愛着をもって『オオマチ』と呼びます。
練習の様子から『オオマチ』当日まで取材して感じたのは、白間津地区のみなさんの『オオマチを成功させよう』という熱い思いでした。
第1弾【舞台裏編】第2弾【当日のご案内】に続き、今回は舞台裏から当日までを通して体験したこと、感じたことをお伝えします。

内から外に向けた参加型お祭りへ

オオナワタシの一場面

この夏、長雨続きで開催自体が危ぶまれていましたが、本番の3日間はなんとか晴れ、お祭りが開催されました。
当日は大きな幟(のぼり)が神々しく立ち並び、踊り子の衣装もさらに美しく、見物客はもちろんカメラマンや取材陣も多く、練習とは違う祭り独特の空気が漂っていました。

神輿の担ぎ手として千葉工業大学の学生達も駆けつける

地元の若者だけでは人手が足りないため、神輿の担ぎ手として千葉工業大学の学生さん達が、下準備の手伝いには千葉大学の学生達さんが参加していました。これだけ多くの若者が白間津のお祭りに興味をもち、駆けつけてくれたことに驚きました。
また、お祭りのハイライトでもあるオオナワタシ*では、大勢の見物客も見ているだけでなく綱引きに参加でき、地元の方と混ざって綱引きを楽しんでいました。
一昔前までオオナワタシの祭事に参加できるのは18歳以上の男子だけだったのです。

もともとは地域住民に向けた古い習わしが残る門外不出だったこのお祭りですが、今は外に向けて開かれつつあります。
変わることを余儀なくされた面もあるけれど、「内から外」という流れだって、広がりを見せていく、ということではすばらしいことですよね。
参加型に変わりつつあるお祭りの今後が楽しみです。

*オオナワタシ…「大綱渡し」が方言化した呼び名で、太い綱で神の依代(神の宿る所)である大幟を引く祭事。

白間津の海の男たちの逆境に対する強さを目の当たりに‼

大幟が倒れないよう舵をとる

三日間の中日である本祭(ホンマチ)の日に、このお祭りのハイライトでもあるオオナワタシの行事が行われました。
オオナワタシは、太陽と月の神を表わす日天(ニッテン)・月天(ガッテン)と呼ばれる大幟を仮宮目指して太い綱で引く祭事です。
みんなで力まかせに綱を引くため、高さ12mの大幟は地響きをたてて何度も倒れてしまいますが、それも楽しんで運んでゆきます。

二本目の月天を参加者みんなで力を合わせて、引いている最中のことです。
大きな月天の幟の、長い長~い棒が半分にポキッと折れてしまいました。
大勢の引き手の「あぁ~あ」という声が会場に響き渡り、会場全体には残念な空気が流れました。

月天の大幟が折れてしまった瞬間

そのとき『最後だぞっ‼』という一声があがりました。

それをきっかけに、『ワッショイ、ワッショイ』という掛け声とともに、折れてしまった月天の笠(幟の上の部分)が神輿の様に担ぎあげられました!
会場は拍手でいっぱいになり、その場の空気が一気に明るくなりました。

月天の笠を神輿のように担ぎ上げる海の男たち

私も残念な気持ちから一転。4年に一度のお祭りで幟が折れるというまれな事態を見事に乗り切った白間津の海の男たちの逆境を乗り越える強さに感動しました。

地域のお年寄りも待ちに待っていました‼

家の前で祭りの練り歩きを待つ地元のおじいちゃんおばあちゃんもこのお祭りを待ちに待っていました!
(遠くまで出かけられないから、家のそばで…)と、お祭りの練り歩きを自宅前で見送ったり、会場に椅子を持ちこんで座って見たり、その勇壮な様を目に焼きつけているようでした。

酒樽萬燈の勇壮な舞を目に焼きつける

酒樽萬燈が壮麗に並ぶ

酒樽萬燈*の棒には、各々に○組と書かれてあります。白間津地区には台という組織があって、その台から酒樽萬燈が一本出されるそうです。お祭り休憩時に、おばあちゃん達が集まり、この棒はどこの台の組かね?とのぞき込んで、「今年のはいい出来だねぇ~」と、話しているようでした。

※酒樽萬燈(サカダルマンドウ)…長さ約3mの棒に酒樽二つを取りつけた重さ40キロの酒樽萬燈を海の男たちが、江戸時代の火消しのごとく振り上げます。

最終日、オッペコの渦にのみこまれる。

さぁ~みなさんも一緒に踊りましょ

お祭りのフィナーレに全員で踊るオッペコ踊り*があることを皆さんご存知でしたか?
とはいえ私もお祭りの取材に行くまで知りませんでした。
このオッペコ踊りは、お祭り見学客でも誰でも参加していい踊りなのです!

オッペコ踊りの渦

『オッペコ、シャラリコ ノーエ。オッペコ、シャラリコ ノーエ』の節が延々と神社の境内に響き渡り、太鼓の周りをぐるぐるとオッペコ踊りを舞いながら周ります。
地元民か見物客かどうかの境界線などまったく無くなり、熱気の渦が舞い上がるようでした。

踊りも中盤、私も上から見ているだけでなくその輪に入ってみたくなりました。
踊れないなら上手な踊り手を見て踊ればいいやとチャレンジ精神。
私の踊りをみるにみかねてか地元の方が「こうやって踊るんだよ」と教えてくれました。
踊り初心者の私でも踊りやすい踊りでした。
約一か月練習から取材させてもらった白間津の皆さんと一緒にお祭りを体感でき、感無量で涙を流しながら踊っていました。

お祭りの帰りの夜道、お祭りの余韻を感じながら歩いていると、どこかの家のお風呂場から『オッペコ、シャラリコ~~』の歌声が聞こえてくるではありませんか!
みんな楽しかったんだなぁ~とじんときました。
お祭りの最終日に行かれたら、ぜひオッペコ踊りの輪に入ってお祭りを体感してみてくださいね!

※オッペコ踊り(始終楽ともいわれる)…鹿島神宮に端を発した鹿島踊りと弥勒下生(みろくげしょう)信仰の弥勒踊りと融合して踊られる集団民俗舞踊が起源ではないかとされる。安房地方では、ミノコ踊りと称されており、白間津にいたってオッペコ踊りとなまったのではないかと地元民の間で考えられている。踊り自体は、トヒイライの踊りに似ている。

日々の積み重ねが大事‼

伶人(音楽を奏する人)のみなさんの打ち上げ

お祭りがひと段落した打ち上げの席のことです。
お祭りの奏者のある方が、何気ない会話の中で、「大祭自体は、四年に一度しか行われないけれど、毎年毎年の積み重ねの中で四年後のお祭りがあるんだよ」と話してくれました。実際、神楽が1月の春祈祷の際に行われ、巫女舞が春祈祷と7月の大祭のない時の陰祭り(カゲマツリ)に行われているようです。その時には、四年後の大祭の安寧(あんねい)を願う意味もあるそうです。
『何事も一つ一つの積み重ねで成功する』そんな風に感じられ、お祭りの行事の過程で伝統や技術以外にも受け継がれるものが、何かしらあるのだと思いました。
日々の自分に向けた胸に刺さるいい言葉でした。

太鼓を叩いてマメがつぶれたよと。 マメも誇らしい。

めったに食べられない鯨のオバイもふるまわれた

まとめ

子どもが減っていることは、全国どこでも同じですよね。
ここ千倉町の白間津地区も同じです。
お祭りの主催者側である大人達が、この白間津地区に伝えられた伝統的なお祭りを次の世代の子ども達に伝えようと必死に教える様やまなざしは、胸を打つものでした。
大人達の『オオマチを成功させよう』という思いを子ども達もちゃんと受け取ったのでないでしょうか。

2019年9月10月に起こった台風15号と19号、さらに洪水の影響で、白間津地区やお祭りの祭神である日枝神社が被害にあってしまい、4年後にこのお祭りが行われるかどうか分かりません。
この台風で教わったことは、『今目の前に当たり前にあることやものは、もしかしたら明日ないかもしれない』という事実でした。
当たり前が当たり前でなくなるということです。
このお祭りや神社や町、私たちさえも明日には存在しないかもしれません。
だからこそ、今を、一日を、一生懸命楽しく生きたいと強く思うようになりました。
もし4年後この地区が復興でき、お祭りが行われたらぜひお越しください。
また、みなさんが住んでいる町のお祭りに、地域の集まりに足を運んでみようかな、と思っていただけたら幸いです。

最後に、白間津地区や台風の被害にあわれた地域の一刻も早い復興をお祈りいたします。

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白間津の日枝神社 南房総市千倉町白間津335

●白間津の大祭試写会のご案内●
この記事で取り上げた白間津の大祭の三日間を写真スライドショーで上映します。
日時:12月14日(土)一部:14:00~14:30 / 二部:16:00~16:30
場所:白間津のコミュニティー集会所
千倉町白間津838-1
入場無料。一部30分程度です。お気軽にお越しください。

 【参考文献】
『白間津の大祭』著作:千倉町・朝夷地区教育委員会 平成6年3月31日発行
『白間津のルーツとオオマチ考』著作:岩戸山円正寺護持会 会長 野嶋孝一 令和元年5月1日発行

 この記事を書いたのは…

shouji naomi
shouji naomi
香川県出身。
只今子育ても半ばにさしかかり、40代からやりたいことを仕事にしたいと一念発起。
プロカメラマンに師事しながら、駆け出しカメラマンとして千葉県南房総市を拠点に“カメラで地域おこし”をテーマに仕事している。人との出会いを大切にし、人との輪をつなげるお仕事ができたらいいなぁと思っています。
ライターとしても、“地域おこし”ができるのではないかと猛勉強中。

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