舞台はココ! 活字の世界の南房総【6】エミリの小さな包丁 森沢明夫著 角川書店
こんにちは、南房総市和田町在住のあわみなこです。
2014年3月に東京都調布市から移住してきました。
この地を愛する私は、南房総を舞台とする映画、小説、エッセイなどは見逃さないようにしています。
舞台となった町はどこ?
今回、紹介する「エミリの小さな包丁」は森沢明夫さんの著作です。
森沢明夫さんといえば、そう、「虹の岬の喫茶店」を書いた方。
吉永小百合さん主演で映画にもなりましたよね(映画のタイトルは「ふしぎな岬の物語」)。
「虹の岬の喫茶店」は鋸南町(きょなんまち)の明鐘岬(みょうがねみさき)が舞台ですが、「エミリの小さな包丁」の舞台は房総とあるだけで、どの町がモデルかということは、はっきりしません。
「夕日がきれい」となると内房でしょうか。
でも地名の「龍浦」の響きや町の描写から想像すると勝浦あたりの気もします。
「小さな港がある」というヒントもあるので我らが和田浦でもいいのかも?
特定の町がモデルになっている訳ではありませんので「きっとここだろう」と想像するのも楽しいですね。
房総で癒やされる
この物語は主人公、エミリがスーツケース1つを持って電車に乗り込むところから始まります。
エミリは東京で働くうち恋愛に失敗し、仕事もお金もなくなってアパートをひきはらいました。
向かう先は房総の龍浦。母方の祖父が暮らしている小さな木造の家に転がり込むことにしたのです。
朴訥(ぼくとつ)なお祖父ちゃんとお祖父ちゃんの作る美味しいご飯、町のやさしい人々、そして龍浦の自然の美しさ――。
傷ついて心がクシャッとなっていたエミリは次第に元気を取り戻していきます。
ご飯はこの物語の要。
各章のサブタイトルを見てみましょう。
カサゴの味噌汁、アジの水なます、サバの炊かず飯、チダイの酢〆、サワラのマーマレード焼き、黒鯛の胡麻だれ茶漬け…
名前を聞くだけで、そそられますねえ。 ご飯の支度のシーンを読むだけでなんとなく元気がでてきます。
また、この物語では武器、包丁というキーワードがあります。全編を通して軽いミステリー仕立てになっているので、この言葉がでてきたらご注意を。
冒頭のエミリのひしゃげた気持ちはよく理解できました。「失敗してアパートをひきはらわなければならなかった」という経験が、私にもあります。
それはそれはやるせない気持ちでした。今となっては何のことはなかったじゃないかと思うのですが若い頃はそうはいきませんよね。
著者の森沢明夫さんは私と同世代。千葉県船橋市の出身とのことで千葉に縁のある方です。
2006年にはミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞しており、小説だけでなくノンフィクション、エッセイ、絵本まで幅広く活躍中。
同世代の千葉県人として応援いきたいと思います。
この本について、とても良いレビューがあります。
丸善お茶の水店でご自分の手書きPOPを作成。そのPOPが当時あまり注目されていなかった本1冊をベストセラーに導きました。
そんな伝説の書店員、吉海裕一さんがお書きになったものです。さすが。