舞台はココ! 活字の世界の南房総【1】トワイライト・シャッフル 乙川優三郎著
こんにちは、南房総市和田町在住のあわみなこです。
2014年3月に東京都調布市から移住してきました。
この地を愛する私は、南房総を舞台とする映画、小説、エッセイなどは見逃さないようにしています。
今回は直木賞作家、乙川優三郎氏の著作「トワイライト・シャッフル」を紹介します。
この作品は「外房の小さな町」が舞台になっている十三の物語からなる短編集で、ひとつひとつの物語は独立しており、舞台になっている町も一か所だけではありません。
人生に現れる一瞬のひらめきや輝きによって心が動かされ、そこから新しい水路が開く――といった物語が多く、登場人物たちにすっと気持ちを沿わせることができます。
十三編の物語は田舎の片隅で暮らす市井の人、いわば「土着系」の人々の話と、旅で土地を訪れ、短期間で去っていく人、いってみれば「リゾート系」の人々の話に分けられます。
この土着とリゾートという2種類の舞台が設定できるのは短編を書き、編む際にとてもオイシイはず。
他の作家の方もこぞって書いていただけないでしょうか、南房総を舞台に。
どの物語も甲乙つけがたいのですが、私のベストスリー。
白浜の元海女ふたりのお話「イン・ザ・ムーンライト」、これがぶっちぎりで一番。
そして「今のところ房総半島が一生の生活圏」の外構工事屋さん隆の物語「私のために生まれた街」。
あともうひとつが「ビア・ジン・コーク」か「オ・グランジ・アモール」か、どちらか迷うところです。
きれいなことばかりが描かれているわけではないのに、読む者を傷つけず、心にがっちり印象を残すけど押し付けがましくない読後感で癒やし効果があります。舞台である「おんだら(わたしたちの)街」をこのように美しく描いていただき、とてもうれしく思います。 作者の乙川優三郎氏は千葉県立国府台高等学校卒。千葉に縁があるのですね。時代小説を多く書かれていますが、別の短編集「太陽は気を失う」は現代モノで、房総が舞台の物語が含まれているようです。機会を改めて書かせていただきます。
文庫版には作家の小手鞠るいさんが解説を書いており、その上手さに思わず「さすが作家だ」とうなりました。