田舎ならではのお仕事。削蹄師(さくていし)って何?‐削蹄師を目指して独立するまで‐
南房総市には「千葉県酪農のさと」があり、日本の酪農発祥の地とされています。JAグループ千葉の千葉県の農産物全国順位(平成30年度)によると、生乳の産出額は全国4位です。https://www.ja-chiba.or.jp/contents/detail/id=73
おいしい牛乳が搾れるよう、牛たちの健康を守るために関わっている職業の一つに削蹄師があります。
削蹄師は、人間でいうところの爪にあたる牛の蹄(ひづめ)を定期的にカットして形を整え、牛が快適に過ごせるようにサポートする職業のことです。「房州削蹄所(ぼうしゅうさくていじょ)」を立ち上げ、削蹄師として活躍している山川弘恭(ひろたか)さんにお話しを伺い、3回にわたり削蹄師についてお伝えしたいと思います。
削蹄師になったきっかけ。どうやったら削蹄師になれるのか?
山川さんが酪農現場で仕事をしていたときに、削蹄師の仕事現場を間近で見る機会がありました。鎌(かま)や剪鉗(せんかん)という道具を使って蹄を整えている姿を目にして「かっこいいじゃん!!」と思ったことが、削蹄師を目指すきっかけだったそうです。
山川さんは南房総にいる削蹄師の元を訪れ「教えてください」とお願いしましたが、数人いる削蹄師全てに断られてしまいました。「自分のライバルを作るわけだからしかたない」と山川さんは言います。
24歳のとき、2級認定牛削蹄師の試験を受けました。「この試験は、どうぞこの世界に入ってくださいっていうやつだから、落ちる人は滅多にいないです」と山川さん。その試験の講師を務めていた原幸夫氏が、市内の三芳地区で作業をしていると聞いてさっそく弟子入りのお願いをしに向かいましたが、やはり断られてしまいます。そこで諦めきれず、原氏が仕事をする現場まで1カ月ほど通ってお願いし、25歳のときにやっと弟子入りさせてもらうことができました。
馬の蹄に蹄鉄(ていてつ)を打つ装蹄師は「装蹄教育センター」があり、そこで学ぶことができますが、牛の削蹄師の場合はそういったものがないので、弟子入りして学ぶしかないそうです。
独立して「房州削蹄所」を立ち上げる
一般的に削蹄師として弟子入りして独立するまで、住み込みで3~5年かかるそうです。山川さんは既に所帯を持っていたため通いで学びましたが「住み込みでない分、厳しく仕込んでくれました」と当時を振り返ります。
原氏から出された独立の条件は、技術を競う競技会の地方予選で優勝すること。山川さんは、弟子入りして1年4カ月で見事優勝し、独立の条件を満たしたのでした。「先生がすごい人だったんです。優勝経験者や大会出場者の前で10年模範演技をやっていた人でした」と山川さん。27歳の秋、房州削蹄所を立ち上げて独立を果たしました。
房州削蹄所Facebook ページ: https://www.facebook.com/%E6%88%BF%E5%B7%9E%E5%89%8A%E8%B9%84%E6%89%80-311652396209314
田舎ならではのお仕事。削蹄師(さくていし)って何?の2回目は、削蹄師の魅力や、一日の仕事の様子について伺います。