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砂と粘土と藁を使った土のオブジェ「コブハウス」作りに挑戦

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「Cob house(コブハウス)」という言葉、聞いたことありますか?砂、粘土、藁(わら)を混ぜたものを「コブ」というそうです。天然素材のコブを使って作られた家は、コブハウスやアースビルディングなどと呼ばれています。

今回紹介するコブハウスは、家というより敷地内のオブジェ。本当に砂と粘土と藁で作ることができるのか、実験的なコブハウス作りが進められました。

誰が、どこで、どんなコブハウスを作っているの?

コブハウス作り

石の基礎の上に作られているコブハウス。丸太や回転する丸い窓がアクセント。

 

コブハウス作りの場を提供したのは、南房総市三芳地区で平飼いの有精卵を生産している「すぎな舎」。鶏舎の上にある、見晴らしのよい場所が選ばれました。すぎな舎オーナーの川合淳一さん(35歳)は、この地に移住して家と敷地の改修作業を行っている真っ最中。「このコブハウスを中心に周りをきれいな農園と遊び場にして、コブハウスを一つの象徴にしたい」と話します。

コブハウスを作っているのは、遠藤大地さん(27歳)をメインにした仲間たち。コブハウスの存在を知り「自分で作ってみたい!」と場所を探し始めたとき、川合さんに出逢いました。遠藤さんは季節労働者として、沖縄や長野、和歌山、静岡などを移動しながら仕事をしています。2018年1月から、季節労働の地に南房総が加わりました。

コブハウス作り

コブを積み上げて壁を作っている遠藤さん。棒で穴を空け、接着を促します。

 

コブハウス作りの先生はwebサイトと本

コブハウスを「作りたい!」と思ったものの、そんな経験も知識もない遠藤さん。主に海外のwebサイトや本で作り方を調べました。手描きの簡単な設計図を元に、半年後の完成を目指してコブハウス作りがスタートしたのです。

まずは、コブに必要な粘土となる土探しから。川合さんの畑の土、田んぼの土、コブハウスを作る場所近くの土で試してみます。藁や砂の量も感覚が頼り。触ったときの感覚で配分と硬さを調整しました。その結果、コブハウスを作る場所近くの土が一番適していると判断。結果オーライで、運搬作業が大幅に軽減されました。

コブハウス作り

緑色の手作りドアの上には、瓶を埋め込みました。

 

何せ現場は、階段を上った先にある小高い丘。見晴らしがよいのでここに決めましたが、運搬には適していませんでした。それを実感したのは、基礎となる石を運んだとき。1人で石を一つずつ持って運んだときに、現場選びの大切さを痛感したそうです。

 

コブハウス作りで使用した電動工具とおおよその材料費

このコブハウスは、土地にあるものともらい物、廃材を大いに活用して作られました。 基礎に使った石や、雨の通り道に入れた瓦はもらい物。窓は廃材の木戸や棚の扉を利用したDIY(ディーアイワイ)。DIYとは、素人が自分で作ったり修繕したりすることをいいます。丸窓はコンポジットパネル(ベニヤなどの合板)を、窓枠とドアは2×4(ツーバイフォー)材を購入してDIYしました。屋根材として丸太と2×4材、コンポジットパネル、防水シートを購入。知人宅で伐倒した丸太や廃材も使いました。材料費は、トータルで15万円くらいだといいます。

コブハウス作り

使った電動工具は以下の通り

  • サンダー
  • 電動カンナ
  • チェーンソー
  • インパクト
  • 丸ノコ
  • ジグソー

遠藤さんはコブハウスはもちろん、家造りの経験もありません。父親が土木系の職人、祖父はとび職ということで、子どものころから身近に道具があり、それを手にしていたそう。幼いころから自然に身に付いていったモノづくりの力が、ここで発揮されたようです。

 

コブ作りは大変だ!砂と粘土と藁をひたすら捏ねる日々

2018年の1月末から4月頭まで川合さん宅に宿泊し、田んぼや養鶏を手伝いながらコブハウス作りを行ってきた遠藤さん。コブ作りに思った以上の時間がかかったといいます。

コブハウス作り

コブ作りに精を出す雨宮さん。

 

4月から沖縄へ季節労働に旅立ち、8月1日に房総へ舞い戻ったとき、季節労働仲間の心強い助っ人も一緒にやってきました。助っ人の雨宮奈緒さんはコブ作りを担当し、黙々と土を掘り、足で混ぜながら粘土作りに励みます。11月末までの3カ月間、コブ作りに協力してくれました。他にも、入れ代わり立ち代わりで、10人ほどの仲間が数日~1週間ほど滞在し、手伝ってくれたといいます。

コブハウス作り

コブハウスの下には、鶏舎の屋根。その向こうには美しい景色が広がる。

それでも、予定の半年たっても完成できず…。雨で作業が進まなかったり、コブ作りに時間がかかり、壁作りが中々進まなかったり。コブハウスを作るときに一番必要なのは、恵まれた天候と人力のようです。

 

土のオブジェ、コブハウスの完成は…

コブハウス作り

11月末に屋根が完成し、再び季節労働へと向かった遠藤さん。2019年GW明けに戻り、外壁に漆喰(しっくい)を塗って一応外観を完成させました。漆喰は購入したものですが、自分で作った漆喰を仕上げに塗ろうと、藁を発酵させて準備を進めているとか。床は※三和土(たたき)にして、コブで作ったロケットストーブを利用し、お風呂が沸かせるようにしたいし、やりたいことは盛りだくさん。

※“三和土(たたき)は、「敲き土(たたきつち)」の略で、赤土・砂利などに消石灰とにがりを混ぜて練り、塗って敲き固めた素材。3種類の材料を混ぜ合わせることから「三和土」と書く。土間の床に使われる。”引用:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%92%8C%E5%9C%9F

完成予定は?との問いかけに「ないです。サグラダファミリア的なかんじで、いつ完成するんだか」と苦笑する遠藤さん。

コブハウス作り

屋根の上に芝生の種を蒔いて、草屋根に。

 

遠藤さんは、将来どこに住んだとしても、南房総の川合さん宅は必ず訪れると断言しています。コブハウスを作ってみたいという遠藤さんと、きれいな農園と遊び場を目指して改修中の川合さん。2人の交流と改修作業は、今後も末永く続いていきそうです。

 

まとめ

「本当に砂と粘土と藁で作ることができるのか」その答えは、イエスだと思います。時間とやる気、労力さえあれば、身近にある素材で何かを作ることは可能でしょう。今後このコブハウスがどんな進化を遂げていくのか、見守りたいと思います。

 この記事を書いたのは…

なべたゆかり
なべたゆかり
熊本生まれ、兵庫育ち。
国内・外を放浪したあと、2011年1月南房総に漂着。
築百年余りの古民家を改修しながら、犬、猫、ヤギとの生活を満喫中。
田んぼや畑だけでなく、イベント出店やライター業など、“暮らしから生まれる百の仕事をこなす”立派な百姓を目指して活動中。

◆安房暮らしの日常ブログ
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